とほんに入荷した本の中から店主が私的に気になる本をいくつかピックアップして紹介しています。年末年始の慌ただしさからの確定申告、教科書販売のお手伝い、トークイベントあれこれ、などなどバタバタしてしまい、かなりお久しぶりに更新です。
短編集 ヘンルーダ
松岡千恵
岬書店
真っ先に紹介したいのはこちら。現役書店員の方が書いた短編集。読み始めると、書店員が仕事をしている話が現実とゆっくり分離していくような物語が展開して、心がゾワゾワするような心地良いような不思議な読み心地に引き込まれていきます。
上林暁傑作小説集 孤独先生
山本善行(撰)
夏葉社
『星を撒いた街』に引き続き上林暁の美しい面に光をあてた傑作集。収録作の「天草土産」は下宿先の14歳の娘と天草旅行をする話で、これは「伊豆の踊子」と並び称されてよいのではと思わされる名作。阿部海太さんの装画・カラー挿絵も素晴らしいです。
松江日乗 古本屋差し入れ日記
イノハラカズエ(冬營舎)
ハーベスト出版
驚くほど毎日差し入れがる古本屋さん。みんなが差し入れを持ってきたくなる店主さんの人柄がにじみ出ていて、読んでいるだけでも差しれを持っていきたくなる。差し入れ日記でありつつ、冬營舎に行きかう人たちとの交遊録である。
芥川龍之介・菊池寛共訳 完全版 アリス物語
ルイス・キャロル
グラフィック社
子どもが読むためには、子どもが理解できる日常的に使う言葉で書くのがいいのだろう。「お前さん」「癪でたまらない」「平気の平左」本書では今の子どもには馴染みがない古い言い回しが多いが、当時はきっとわかりやすかったのだろう。
雨犬
柳本史(版画)
外間隆史(文)
未明編集室
版画のイラストと詩のような言葉で描かれた物語。青年との日々のエピソードがあり、「ぼくは雨犬」という言葉のあとに、雨犬の想いが続く。「ぼくは雨犬。雨の降る日が好き。」「ぼくは雨犬。きみはペンキ職人。」取り出してみると、なんてない言葉が、この本のなかにあると、とても愛おしく響く。
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